アートフロントギャラリーでは、カネコタカナオの個展を開催いたします。
プレスリリース
このたびアートフロントギャラリーでは、カネコタカナオによる個展を開催します。アートフロントギャラリーでは2017年以来5年ぶりの展示となりますが、近年テストを繰り返し取り組んできたコミックのコラージュを用いた層構造の作品群を正式に発表します。
カネコタカナオは、情報過多の現代においてその反乱が生み出すモンスターや、フェイクニュースや匿名の誹謗中傷など昨今問題になるネット上のノイズを可視化するような絵画作品で知られています。直近のアートフェア東京、タグボートアートフェアでも大変人気を博し、作品のほとんどは開始直後に完売となりました。本展覧会では、同様の大型作品を含む約10点ほどの展示を予定しております。
従来のイラストレーションと比較した際に、近作において非常に顕著な特徴は、その色彩とキャラクターの持つ属性が引き起こす既視感にあります。一見レトロに見える色彩は、過去作のモノクロームの流れを汲みながら昨今の70’~80’のデザインやキャラクターイメージのリバイバルを感じさせます。その下に時折見えるコミックスのカラフルな色はこれと対照的でインパクトがあり観る者の心を躍らせます。非常によく考えられ構築された画面になっています。また、作家は、世界中に流布するイメージには、それぞれ属性がありその要素を抜き出すことで見たことがあるという状態を作ることができるといいます。これは昨今のSNS(特にインスタグラムなど)によるイメージの拡散による利点と問題の両方を想起させます。情報自体は本来ニュートラルで無害なものですが、一方で悪用されれば我々の日常に簡単に入り込み、アイディアを誘導できるツールとして、人々を操作してしまうかもしれません。彼が描くモンスターたちは、一見コミカルなキャラクターですがよく見ると体が一部欠けており、ありえないところから手が生えているなど、異形の姿です。これらは現代における情報の在り方の形象化ということができるかもしれません。人気作家の最新作に是非ご期待下さい!
出展作家
カネコタカナオの作品に登場するキャラクターは、漫画とグラフィティが融合した独特の画風で描かれる。近年の作品はさらに、タイポグラフィーや幾何学模様、そして実際のコミックのコラージュを層構造で構成した新たなスタイルとして完成させている。
インターネットの領域が社会全体に広がり、日常にSNSが浸透するとともに私たちはその利便性だけでなく、匿名性から生まれる誹謗中傷やヘイト、極端な正義、陰謀論といったある種の弊害とも付き合わざるを得なくなっている。偏った情報や発信を「ノイズ」と捉えて無視することもできるが、カネコは人間が処理しきれない過度なノイズの在り様に強く興味を持ち続けている。
様々な姿で描かれるモンスターのキャラクターは、そうしたノイズに晒されたときに生じる人間の二面性を表現しているのだという。モンスターは鋭利な牙やむき出しの眼球が恐ろし気に描かれているものの、どこか自滅的で滑稽さを滲ませているのが印象的だ。リアルな社会とネットの世界で自身のキャラクターを使い分ける人間の複雑性や、膨大な情報を受け止めるうちに偏った思想を強固にしてしまう様子などSNSのなかで変容していく人間性を取り上げて、モンスター化していくキャラクターと重ね合わせている。
社会システムと人間の進歩スピードが乖離していくことで人間側がシステムのコントロールを失っている状態や、感覚の共有が進むことで個性を放棄していくだろう人間社会の未来予想図など、扱うテーマはシニカルだが、独特の諧謔的表現からは強い社会批判は感じられない。それよりも、どこか可愛らしく憎めないキャラクターを通して、人間社会への強い好奇心と深い親しみを感じることができる。(沓名美和 / 現代美術史家、アーティスト、キュレーター©︎kutsuna miwa)