北城貴子 ‐ 浸透する光

会期終了

2014年3月28日 - 4月20日

Cherry Blood 2014年 キャンバスに油彩 1620×2273mm
この度アートフロントギャラリーでは、北城貴子展を開催致します。
北城貴子の過去の作品、プロフィールについてはこちらをご覧ください
私達の感覚は多くを視覚に頼っている。見ているのは「もの」ではなく光である。つまり眼前の客体はその光の反射を目が捉えることによって初めて認識上の存在となる。当然ではあるが、この私達と世界の関係性は一貫したものではない。近代における解剖学や眼球の研究は宗教から人を中心とした世界観に移行するにあたり重要な役割を果たした。例えば印象派の科学的な側面を今更ここで論じるまでもないが、近代に到り何をいかに表現するかが大きなターニングポイントを迎えたことは単に美術史上の主義や様式の変遷ではなく、もちろん都市や市民社会の変化などを前提としながらも、見える「もの」と身体との関係に現在性が獲得されたことが重要な背景としてあった。
それでは光をテーマに描きつづける北城貴子の現代性とは何であろうか。北城貴子は06から07年に大原美術館で描いた水面の連作と光のあたる庭を描いた作品で脚光を浴びた。その後の作品を当時のものと比較すると、作家の新たな姿勢が見えてくる。それは光のあたる風景を描くことから光そのものを描く姿勢への移行であり、作家の体験を重視することへの移行だったように感じられる。昨年のVOCA展に北城は押し寄せるような空気の密度を感じさせる雪のある風景を出展した。そこには濃密な大気があり、空気の中にある光を感じさせる。北城の描くのは視覚世界だけでは捉えきれない、一瞬一瞬が連続していく中にある実際にその対象と自分との関係性、その体験である。
現代は様々なメディアを通じ、写真が手近に溢れ、見たことのない、止まった時間の中にあるイメージを共有化できる時代である。実際にそこにある「もの」と、共有化されたイメージは将来ますます乖離してゆくであろう。その反面、実際に何かを見る、体験することはより重要性を帯びてくる。北城はその視覚的な世界と認識として現実から乖離する世界を実体験に引き戻し、自身の体験したものの細部、密度という領域を表現する。カメラが風景を透過して空気の中に浮かぶ見えない光を拾い集めるように。イメージとして実体から乖離可能な視覚を越え、実体験を基礎とすることが北城の作品の現代性を際立ったものにしていると思う。
今回の個展では近年の北城の関心を反映し、草花を描いた具象作品と水面を描いた抽象的な作品を発表する。また初めて屋外ではなく、室内のガラスの反射を描いた意欲的な作品をも展示する。ますます広範な視野を持った北城の展開に注目したい。
アートフロントギャラリー 近藤俊郎
営業時間11:00 - 19:00 (月休)
会場アートフロントギャラリー(代官山)
レセプション3月 28日(金) 18:00~

出展作家

北城 貴子Takako Hojo

2004年にVOCA展に参加、その後も大原美術館のレジデンスプログラムに選出されるなど、デビューより常に注目されてきた作家。印象派風のタッチで光をテーマに描き続けているが、描く対象は少しずつ変化している。2006年の大原でのレジデンスでは、緑の木立に光が差し込むスタイルを完成し、広く知られる作品となった。2010年ごろから花のシリーズに光の粒が飛散する作風、その後再び入選したVOCAでは初めて接したという雪景色、さらに光きらめく水面のシリーズなどを描いている。ドローイング、油彩など様々な作品を手掛けながら新たな方向を模索している。