この度、アートフロントギャラリーでは、北城貴子の個展を開催いたします。
アートフロントギャラリーでの個展は約4年ぶりとなる北城。タイトルの「white out」には、「光に包まれて見えなくなる」、「感覚で感じる色や形に撃ち抜かれる」という意味合いを込めました。一貫して「光」を描いていると語る北城は、下地材の加工から仕上げ材の光沢まで、様々な画材をとても丁寧に研究し作品を構成しています。その作品群は、絵画の画面構成もさることながら「絵具」という物質の存在が、表層よりもこちら側へ「光」が迫って感じられるよう力強く作用しているように感じられます。本展では、水面をモチーフに描いた新作の「white out」シリーズとあわせて、草木や花と共に光を描いた作品シリーズも発表予定です。北城の描く「光」をぜひ会場にてご体感ください。
北城貴子の絵画について
北城貴子は、実際の風景を前にして水彩による数多くのドローイングを描き、それらを基に油彩による完成作をアトリエで描き上げるという手順を、学生時代から一貫させている。
ただ、風景を前にその姿を写し取るドローイングについては、描写のスタイルはほぼ変わらないのに比べ、油彩による完成作は、しばし、そのありようを変えてきた。つまり、実際の景色から完成作=絵画への変換の仕方が変わり続けているわけだ。
具体的には、2004年のVOCA展出品作あたりまでの作品は、白くマットで、塗りむらのない平坦な層が画面全体に広がり、その上層に抑制の効いた小さな色彩のタッチが置かれた抽象度の高いものだった。それが、2006年の大原美術館でのアーティストインレジデンスを契機に、一転して実景を再現的に描写する傾向を強め、その後は、再現性の高低や、絵具の物質性の強調に折々の変化を見せながらも、画面全体が「描く」タッチによって埋め尽くされるスタイルを継続してきた。
この2006年以降、画面全体を覆う白く平坦なレイヤーが表れることはなかったので、それを採用するか否かは、再現性の高低以上に、彼女にとっては大きな転換であったのだろう。そう思い至ると、2004年のVOCA展出品作の画面に亀裂が入ったことを、彼女がすごく悔いていたことの意味が、私の中で変わってくる。今にして思えば、繊細で緊張感に満ち、そして長く単調な工程を課すその白い色面の制作は、傍から見る以上に、彼女にとっては、重要であり、それだけに厳しい行為であったのだろう。
では、なぜ今、そのレイヤーが再登場したのだろうか。
きっと、いくつかの要因があり、その確かなところはわからない。ただ、彼女は、画面に浮かび上がるイメージと、絵具と言う物質の間(あわい)である絵画の世界で、さらに、虚像と実像の、より細やかなあわいを入れ込もうとしているのではないかと、私なりには推測する。画面全体に広がるマットで白い平坦なレイヤーは、絵具の厚みであり、具象性の一切ないイメージである。ただそこに、いくつかの色彩が、それも艶やかな質感をもって重ねられることで、現実の風景と絵画との関係、そして彼女自身の絵画のありようを、改めて進化させようとしているのだろう。
出展作家
2004年にVOCA展に参加、その後も大原美術館のレジデンスプログラムに選出されるなど、デビューより常に注目されてきた作家。印象派風のタッチで光をテーマに描き続けているが、描く対象は少しずつ変化している。2006年の大原でのレジデンスでは、緑の木立に光が差し込むスタイルを完成し、広く知られる作品となった。2010年ごろから花のシリーズに光の粒が飛散する作風、その後再び入選したVOCAでは初めて接したという雪景色、さらに光きらめく水面のシリーズなどを描いている。ドローイング、油彩など様々な作品を手掛けながら新たな方向を模索している。