カネコタカナオの作品に登場するキャラクターは、漫画とグラフィティが融合した独特の画風で描かれる。近年の作品はさらに、タイポグラフィーや幾何学模様、そして実際のコミックのコラージュを層構造で構成した新たなスタイルとして完成させている。
インターネットの領域が社会全体に広がり、日常にSNSが浸透するとともに私たちはその利便性だけでなく、匿名性から生まれる誹謗中傷やヘイト、極端な正義、陰謀論といったある種の弊害とも付き合わざるを得なくなっている。偏った情報や発信を「ノイズ」と捉えて無視することもできるが、カネコは人間が処理しきれない過度なノイズの在り様に強く興味を持ち続けている。
様々な姿で描かれるモンスターのキャラクターは、そうしたノイズに晒されたときに生じる人間の二面性を表現しているのだという。モンスターは鋭利な牙やむき出しの眼球が恐ろし気に描かれているものの、どこか自滅的で滑稽さを滲ませているのが印象的だ。リアルな社会とネットの世界で自身のキャラクターを使い分ける人間の複雑性や、膨大な情報を受け止めるうちに偏った思想を強固にしてしまう様子などSNSのなかで変容していく人間性を取り上げて、モンスター化していくキャラクターと重ね合わせている。
社会システムと人間の進歩スピードが乖離していくことで人間側がシステムのコントロールを失っている状態や、感覚の共有が進むことで個性を放棄していくだろう人間社会の未来予想図など、扱うテーマはシニカルだが、独特の諧謔的表現からは強い社会批判は感じられない。それよりも、どこか可愛らしく憎めないキャラクターを通して、人間社会への強い好奇心と深い親しみを感じることができる。(沓名美和 / 現代美術史家、アーティスト、キュレーター©︎kutsuna miwa)
2002年に東京造形大学研究科(絵画)を修了後、東京を拠点に活動し、2007 年の観音寺市でのレジデンスプログラムへの参加以降は中之条ビエンナーレや水と土の芸術祭、また国内外のアートフェアでも紹介されるなど徐々に活動の場を広げている。2012年の越後妻有アートトリエンナーレでは土の美術館「もぐらの館」において土を用いたペインティングをキャンバスのみならず窓ガラスなどにも展開して展示。
風景を主題としている南条の作品の大きな特徴として、絵具で描かれる部分と、描かれている現場の土を使った部分とがある。作家はその場所を自ら訪れ、訪れた場所の魅力や歴史や日常などに基づき、、土を採取し、そうして持ち帰ったさまざまな情報を分析して絵画に落とし込む。2016年アートフロントでの展示では、ノルウェイのレジデンスで創作した現地の土を使った平面作品のほか、富士塚をめぐる新作のインスタレーションを発表した。