船田玉樹の画業の豊かさは、どの一作からも窺い知ることができる。
絹本の松林図からは、その応物象形の見事さと細筆の技術の粋が知れ、扇面に点在する花の輪舞を見れば経営位置とはかくのごときものかと納得できる。ガラス絵の自在さと色あいは随類賦彩の楽しさを伝えてくれる。それらは御舟、古径につながる日本画の伝統のなかで鍛えられた、いわば伝移模写の習練の具現であった。
「九品仏の雨」以来の大幅は、後年の屏風絵にいたって、ついに大胆でありながらも繊細な骨法用筆。まさに絵画の醍醐味を堪能できる。豪華絢爛、まさに華美、さらに豪胆。それはこの豊穣な水、多彩な土の列島で花開いた日本画の現代での精髄であり、圧倒的な存在感を示している。
そして驚くべきは、画が人生そのものであった氏の、晩年の作品がますます明るく華やかであったということだ。こんな例は、鉄斎しか知らない。
船田玉樹の風景画は独特の趣をもっている。初期の「九品仏の雨」の堂舎を描いても、それは作家の内照の世界であった。後年の屏風にいたって、それが梅や桜や雪の林であっても、描いているのはご自分の脳裏を嵐のように駆け巡る、豪華でアーティフィシャルな生理であったのではないか。
(美術手帖2011年2月号 より抜粋)