豊福亮個展「黄金の境界」

会期終了

2025年07月25日 - 08月23日

豊福亮《天女像》2025新作 / 2020×2940×220mm Photo by hiroshi noguchi
アートフロントギャラリーでは、アーティスト・豊福亮による個展「黄金の境界」を開催いたします。豊福はこれまで、越後妻有や瀬戸内をはじめとする国内外の芸術祭で、土地の記憶や物語に根差したインスタレーション作品を多数発表してきました。2025年に香港で初個展を開催するなど、注目を集める作家のひとりです。

本展は、作家が長年構想を重ねてきたイメージやモチーフを、レリーフ作品として具体化した試みです。各地で出会った伝承や逸話、どこか現実離れした物語を題材に、「日常とは異なる色に出会った瞬間に開かれる異世界や異次元への入り口」という感覚を、「黄金の境界」というタイトルに込めています。

豊福にとっての「黄金」は、単なる装飾や高価な素材ではなく、時間を超えて変質しない金という物質そのものへの関心を起点としています。同時にそれは、自然と対照的な色彩でありながら、宗教性や欲望、人間性といった象徴性をも内包しており、豊福はそうした意味合いをユーモアを交えて扱ってきました。また彼は、地域に根ざした祭りや風習に強い関心を抱き、外から見ると異質に映るようなかたちや営みに魅了されてきました。豊福の芸術観の根幹には常に「サイトスペシフィック=その場所から生まれる表現」があり、作品はその土地の文脈と結びつきながら、観る者を“別の世界”へと誘う入り口となることを目指しています。

本展では、豊福が近年取り組むレリーフ作品を中心に、大型・中型・小型あわせて7〜10点を展示予定です。いずれも、伝承・儀式といった目に見えない文化的要素を混ぜ合わせ、金色に染め上げることで新たな想像を喚起する作品群です。中でも幅3メートルを超える大型作品《天女像》は、日用品や装飾品、神話的モチーフなどが交錯し、まるで海底から引き上げられた祈りの痕跡のように、静かに時間と記憶を封じ込めています。
営業時間火~土 11:00 - 17:00
休廊日日曜、月曜、祝日、およびお盆期間(8月11日~15日)
イベント【トークイベント(対談)】
2025年7月28日(月)19:30~ / 登壇者:豊福亮(アーティスト) × 北川フラム(アートフロントギャラリー代表)
*下記URLよりお申込みください
https://forms.gle/gbdtSZYZzTRjgKXQ6

みどころ

これまでインスタレーションを中心に活動してきた豊福にとって、本展はギャラリースペースでの初めての挑戦となる、新たな展開です。また本展は、8月1日から開催される瀬戸内国際芸術祭2025・夏会期とも呼応し、作家の世界観をより多面的に体感できる貴重な機会となるでしょう。
新作《大蛇図》(部分)
「黄金の境界」展示風景、2025
「黄金の境界」展示風景、2025
「黄金の境界」展示風景、2025

展覧会開催によせて

北川フラムアートフロントギャラリー代表

ユーラシア大陸のはるか西南の地に如来がおられる光り輝く巨大な塔があり、そこには瓔珞(ようらく)のように無数の糸が張られ垂れ、その結び目には周りのすべてを映し込み、反射する金剛石がちりばめられているという。それは宇宙のようでありながら、その全体がまた私という心そのものだという。全体は無数のエーテルのように埋まっていて、しかし何もないように見える。それを仏教では〈空(くう)〉という。
 豊福亮の作品は、それが越後妻有の〈黄金の遊戯場(ゆうぎじょう)〉でも松代城二階の〈樂聚第(らくじゅだい)〉にあっても、さらに今年始まった瀬戸内国際芸術祭2025は小豆島の〈黄金の海に消えた船〉においても、空間に使われるお面、掛け軸、道具、ゲーム機、造花、茶器、石膏像、看板、操り人形、ベーゴマ、煙草の自販機、雀卓、あるいは、四季の花々、動物、魚彩図、昆虫図鑑、さらに跳んで、モネやマネ、ドラクロワからダヴィンチ、ラファエロ等の泰西名画(たいせいめいが)にいたるまで、言ってみれば人類史の美術、発明品、日常の生活用品から最新のゲーム機までのモノ尽くしをおさらいし、或はそれらを金泥や金箔で塗りこめる作法は一貫している。それはモノと情報で溢れている現代の空間に、さらにこれでもか、これでもかと充填することによって〈空〉にしているように思えるものだ。〈情報〉という実体のないものによって世界中が埋められていることを〈空〉といってすましてしまう大乗仏教のような達観。あらゆるものの萌芽(ほうが)である〈空〉のさきに作家が何を生みだすか? それを見てみたい。

アーティストインタビュー

豊福亮 初個展記念インタビュー「僕はなぜ黄金の作品をつくる…

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出展作家

豊福 亮Ryo Toyofuku

1976年東京都生まれ。千葉を拠点に活動。自らが見て、聴いて、経験した外的世界を、視覚的・体験的・相互作用的な仕掛けによってプロジェクトとして表現し、人々が集う空間を生み出している。歴史や風土など、その土地に特有の要素を参照しながら、サイトスペシフィックな作品を継続的に制作。制作の過程や完成した作品を舞台にワークショップを行うことも多く、作品を通じた他者との関わりをテーマとしている。2000年に株式会社OfficeToyofukuと千葉美術予備校を設立し、学校長として美術に関わる人材育成にも力を注いでいる。これまで「大地の芸術祭」や「瀬戸内国際芸術祭」などに参加し、土地の歴史や風土を取り入れた作品を発表。「いちはらアート×ミックス2020+」(2021)や「百年後芸術祭」(2024)ではアートディレクターを務め、活動の幅を広げている。