この度アートフロントグラフィックスでは、線によるドローイングで独自の表現方法を追求する作家、鯨津朝子の作品をご紹介いたします。
鯨津の創作の場は美術館、ギャラリーのみに制限されることなく、横浜の赤レンガ倉庫や小学校、公共施設、時には住宅など様々な建造物が作品展示の場となります。また、近年は主に“線”を描くという創作スタイルをとっている彼女の作品表現は、額装されたドローイング作品、建物の壁面から天井へと繋がる作品、また時には建物の中だけでなく、その外へと広がっていき、変幻自在にその姿を変えて表現されます。それぞれの空間から受けたインスピレーションをもとに、ドローイングで描かれた線は、まるで生き物のように自在に時間や空間を泳ぎ、無限に広がります。作家によって命を吹き込まれた“線”たちが織り成す生命力溢れる世界は、輪舞(ロンド)となって、見るものに新たな視覚・知覚世界を提示します。彼女の創り出すその有機的な知覚空間に入り、動きながら作品を見ることによって、鑑賞者はあらためて人間の身体感覚を呼び覚まされるのです。あらゆるものがデジタル化した現代に相対するかのように、鯨津の作品はあくまでも身体感覚にこだわっているようです。そうして提示された作品である“線”たちを前に、見るものは作家が確かにそこを通過したという生命の跡を見るのであり、それを無意識に確認することによって作品と交歓するのです。
アートフロントグラフィックスの展示では、空間を最大限に生かし、平面作品とともに、そこから派生しさらに3次元へと展開した作品を展示、ご紹介いたします。これらの作品群からは、常に多様なベクトルをも見据えながら創作を行う作家の断面が浮かびあがってくるでしょう。現在、拠点をヨーロッパにおいている作家の久々の国内ギャラリー展示となります。
今回の展覧会では、作家がギャラリーの壁面に、直に作品を描きます。ギャラリーに一歩足を踏み入れると、まるで自分が絵画の世界の中に入ってしまったような、自分も作品の一部にでもなってしまったような不思議な感覚を覚えることでしょう。
この、不思議なアート世界、ぜひ体感してみてはいかがでしょう。