アートフロントギャラリーでは、夏のセレクション展を開催いたします。
ROOM1『エコ・ヌグロホ Works』
インドネシアの現代美術家エコ・ヌグロホの作品を紹介。
東京では初展示となる着用できる立体作品《Future Fungus #2》も出品。実際に作品の中に入ってアートを体感することができる展示となる。
そのほか、絵画、刺繍作品などを発表予定。
ROOM2『重なりのカタチ』
レイヤー(層)をテーマに、重なりによって構築される作品を展開。様々な素材、技法、コンセプトの作品を一つのテーマに沿って展示することで、新たに見えてくるアート表現の幅広さと、視点の面白さ、そして各作家の独自性を再発見する展示となる。
(出品作家:アルフレド&イザベル・アキリザン、柳幸典、金氏徹平、原田郁、淵上直斗、カネコタカナオ、井村一登)
出展作家
ジョグジャカルタ生まれ。インドネシアを代表するアーティスト。書籍、コミック、ビデオアニメーションなどの他のメディアとのコラボレーションによって壁画、絵画などを作成。1990年代後半の学生を中心とした運動の経験から、社会的な課題をテーマとした作品も多い。シンガポールタイラープリントInstiture、(シンガポール2013年)、キアズマ美術館(フィンランド2008年)、ハーグ(オランダ2005年)で、個展・アートワークなどを展開。リヨンビエンナーレ2013、ヴェネツィア・ビエンナーレ第55回国際美術展に参加。
アルフレド&イザベル・アキリザンは、家族や記憶、移動といったテーマを軸に活動するアーティスト夫妻。5人の子どもとの日常や家庭生活を共同制作の核とし、日用品や廃材を収集・再構成したインスタレーションを各地で展開している。フィリピン出身で、現在はオーストラリアを拠点に活動しており、2015年の第56回ヴェネツィア・ビエンナーレへの出展をはじめ、国際的に活躍している。地域社会との協働や移民としての経験を通じて、個人と集団、家庭と社会をつなぐ芸術のあり方を探求している。現在は家族で「フルーツジュース・ファクトリー・スタジオ」として制作を続けている。
1978年京都府生まれ。モチーフは主に日常的なイメージをはらむフィギュアや雑貨。現代社会で再生産され続ける情報のイメージを、リズミカルに反復と増幅を繰り返し展開させることで注目を集める。個々の物体が持つ本来の意味が無視されて繋げられることで、思いもしなかったダイナミックな表現がもたらされている。
原田は、コンピューター内に家や公園、ギャラリーのある架空の空間を作り、その中に立った視点から風景を描いている。そこは現実のようでありながら、大気の厚みや自然光によるグラデーションのない、ひと昔前のコンピューターの中の世界の絵に描かれた架空の世界である。仮想空間で生成した世界を、現実のキャンバスに風景画として描き出し、近年は立体作品も制作。仮想と現実が相互に影響し合う入れ子構造へと発展している。
1995年兵庫県神戸市生まれ。関西大学で物理・応用物理学を学び、富士通でSEとして勤務後、2021年よりアーティストとして活動を開始。量子物理学の視点から、物質世界の構造やその奇妙さ、人間との関係を主題に作品を制作している。今回展示する作品が含まれる「ħシリーズ」では、ICチップになる前のシリコンウエハー(半導体)を粉砕し素材とすることで、半導体の持つ人間には理解しがたいという直観に反する性質と、それが社会を支える不気味さや人間の限定性を表現している。粉砕の行為は、プロダクトを物質へと還元し、機能を奪うと同時に、人間が単純化しようとする営みや不正確な補間への関心に由来する。量子力学の定数「ħ」をタイトルに用いることで、ミクロな世界の原理と芸術表現の接点を提示し、新たな表現の可能性を模索し続けている。
カネコタカナオの作品は、漫画とグラフィティが融合した独特の画風で、タイポグラフィーやコミックのコラージュを用いた層構造が特徴。SNSによる情報の「ノイズ」と人間の二面性をモンスターキャラクターで表現し、ネットと現実で変容する人間性を描く。シニカルなテーマながらも、諧謔的で親しみやすいキャラクターを通じて、人間社会への深い好奇心と温かみが伝わる作品群である。今回は、アクリルに印刷をする新たな技法を用いた新作を発表する。
井村はハーフミラーや球体鏡、LEDを用い、視覚や認識に関わる光学的作品を制作する作家。近年は鏡の歴史を探り、「自分が映らない」鏡をはじめ多様な素材で表現の可能性を広げている。瀬戸内国際芸術祭やマツモト建築芸術祭での展示をはじめ、製薬会社やホテルなどのコミッションワークも手掛け、生活空間に光と輝きをもたらしている。
柳幸典は、国家、権力、記憶といった社会的・政治的テーマを扱い、構造の内側に潜む矛盾や不安定さを可視化する作品を制作し続けている。蟻や砂、廃材など、時間や痕跡を内包する素材を用い、変化し続ける状態そのものを作品に取り込むのが特徴である。近年は、地域に根ざした制作にも取り組み、産業遺構や自然環境と対話しながら、アートと社会の関係性を問い直すプロジェクトを展開している。