5/27北川フラム塾特別版レポート「アートがひらく復興のかたちー奥能登・珠洲から」

2026年6月18日

2026年5月27日、北川フラム塾 特別版「アートがひらく復興のかたちー奥能登・珠洲から」が、東京・代官山のヒルサイドプラザにおいて開催され、200名近い方々に参加いただきました。

北川フラム塾は地域芸術祭の背景を学んでいくプログラムで、今回は奥能登・珠洲特別版として開催しました。2024年元旦に発生した能登半島地震から2年あまりが経ち、アートを起点に、地域、行政、企業など多様な主体が関わる奥能登で、新たに生まれつつある動きを通して、これからの地域のあり方を考える機会となりました。

Photo: Ryo Mitamura

第1部「さいはての朗読劇」

第1部では、音楽家の阿部海太郎さん、俳優・演出家の長塚圭史さん、珠洲ちょんがり研究会会長の池谷内吉光さんの3名をお迎えし、「さいはての朗読劇 『珠洲の夜の夢』」が行われました。
この『珠洲の夜の夢』という作品は、阿部さんの声かけにより、詩人・大崎清夏さんが珠洲の民話と民謡のリサーチをもとに戯曲を創作し、長塚さんが構成・演出したもの。初演は震災前の2022年にスズ・シアター・ミュージアムで、俳優・北村有起哉さんと珠洲の人たちの共演により上演されました。

Photo: Ryo Mitamura

さぱーん さぱん……
しゃぷーん しゃぷんしゃぷん……

海辺の波音、塩アイス、牛を連れた男、トンビや狐といったケモノたち…
東京から珠洲にやってきた若者が、地域の人々や生き物たちと出会いながら、さいはての珠洲に近づいていきます。

Photo: Ryo Mitamura

長塚さんが朗読する声に、珠洲の民具などを楽器にした阿部さんの演奏が重なり、場面ごとに差し込まれる池谷内さんの唄う民謡に、客席が聞き入ります。

目を醒ましてしまった大蛸が海からやってきて、大地震を起こし、津波が押し寄せる場面は、2024年の元旦の大地震を想起させました。

Photo: Ryo Mitamura

ー上演後のアフタートーク

阿部さんは、震災前に書かれた『珠洲の夜の夢』が、震災後には見え方や聞こえ方が違って感じられ、この物語を通して、現実の珠洲とみんなの中にある珠洲が育まれていく良さがあると話しました。

珠洲市から来られた池谷内さんは、劇中で唄った「あいの風の唄」に言及し、リマン海流と対馬海流がぶつかり能登半島に吹く「あいの風」は、幸せを運んで来る風だと話しました。

『珠洲の夜の夢』はご自身や大崎さんの体験も織り込まれた、外の人が珠洲に出会う驚きと喜びを抽出したような物語だと長塚さんはいいます。震災直後はこの作品を読むことが難しかったが、時間の経過とともに再び調和していく力がこの土地にはあると気づかされたと語りました。

北川フラム(奥能登国際芸術祭総合ディレクター)は、珠洲を訪れた人々みんなの記憶にあるような要素と、大崎さんが実際に地元の人々と関わった要素が全て入っていると言いました。このようなプロフェッショナルなものが地域に関わることで、能登という地域が人々に伝わっていくのではないか、と述べました。

Photo: Ryo Mitamura

第2部 トークセッション「アートがひらく復興のかたち」

第2部では、北川フラムが「アートがひらく復興のかたち」と題して、これまでとこれからの能登での取り組みについて語りました。

阪神・淡路大震災、中越地震、東日本大震災、長野県北部地震と、それぞれの被災地で行ってきた活動を紹介したうえで、能登半島地震以降の取り組みを報告しました。
2025年5月にはスズレコードセンターが立ち上がり、2026年5月にスズ・シアター・ミュージアムが再開しました。7月には新たな拠点「のとすずハウス」がオープンする予定です。アートを、広く遊び(身体、音楽、食、生活文化)としてとらえ、さまざまな場所に世界のアーティストが関わっていきます。

石川県副知事の浅野大介さん、オイシックス・ラ・大地(株式会社)代表で経済同友会の髙島宏平さんも登壇しました。

浅野副知事は、1年前の「のとマルチセクター・ダイアローグ*」での提案から、6市町(珠洲市、輪島市、能登町、七尾市、穴水町、志賀町)での広域開催にむけて動き出したこと、昨年は自治体職員を瀬戸内国際芸術祭へ派遣したことなどに触れました。復旧復興のプロセスとともに、実現すれば国内最大規模になる広域芸術祭開催への期待を語りました。

髙島さんは、第1回から奥能登国際芸術祭に足を運び、能登を身近に感じてきたことから、震災後は経済同友会として支援体制づくりに取り組んできました。東日本大震災でも地元の当事者たちを支える役割を担ってきましたが、能登では被害の大きさに対して地元の担い手があまりに不足していることがこれまでとの違いだと指摘します。
「よそものが当事者になることも含めた復興」をしていくことが重要で、それが成功するかが日本の大きな転換点になると語りました。

美術や芸術の諸分野が、世界的なつながりの中で、いろいろな地域にどのように関わっていけるかを問い直す一夜となりました。

*のとマルチセクター・ダイアローグ:民・官・NPO が垣根を越えて対話し、能登の未来に向けた具体的なアクションを生み出す取り組み