カネコ タカナオ 個展 – 黒 ノイズ

会期終了

2017年2月10日 - 3月5日

この度アートフロントギャラリーでは、カネコタカナオによる個展「黒 ノイズ」を開催致します。
カネコタカナオ(1977年、埼玉生まれ)は日常の延長線上に漠然とした不安感があるなかで、モンスターをキャラクターとしてドローイングを展開する。モンスターに託されるイメージには人そのものが変容したものから、古い道具類に宿り人をたぶらかすという付喪神(つくもがみ)の言い伝えにみられる日本のアミ二ズム的なもの、あるいは情報化社会において処理しきれないほど過剰にあふれる情報そのものなどがあるという。
アートフロントギャラリーでの初めての個展となる今回、カネコはラジコンのコントローラーやタイプライター、パソコンのキーボードといった様々なガジェット類を支持体に展開する予定だ。これまでは、イラストを主としながら時折、生活の中にある作家の気になるものを組み合わせた平面作品としてのアプローチだった。今回はコンセプトを重視し、日常にあふれる見えない不安感を可視化するために初めてインスタレーションという形で展開する。情報の裏に見え隠れする漠然とした不安感を日常の情報を操るための道具を中心として配置。消された情報、消えない情報の二つをテーマとした試みを見せる。人はいつも手で考え、手で形を成してきたわけだが、道具を得ることでドライブがかかる状況は一転すれば制御不能な状況とも表裏一体であり、その悲喜劇的な様相をクールに提示してくれるだろう。
営業時間11:00 - 19:00 (月休)
レセプション2017. 2. 10 (金) 18:00- 20:00

出展作家

カネコ タカナオTakanao Kaneko

カネコタカナオの作品に登場するキャラクターは、漫画とグラフィティが融合した独特の画風で描かれる。近年の作品はさらに、タイポグラフィーや幾何学模様、そして実際のコミックのコラージュを層構造で構成した新たなスタイルとして完成させている。
インターネットの領域が社会全体に広がり、日常にSNSが浸透するとともに私たちはその利便性だけでなく、匿名性から生まれる誹謗中傷やヘイト、極端な正義、陰謀論といったある種の弊害とも付き合わざるを得なくなっている。偏った情報や発信を「ノイズ」と捉えて無視することもできるが、カネコは人間が処理しきれない過度なノイズの在り様に強く興味を持ち続けている。
様々な姿で描かれるモンスターのキャラクターは、そうしたノイズに晒されたときに生じる人間の二面性を表現しているのだという。モンスターは鋭利な牙やむき出しの眼球が恐ろし気に描かれているものの、どこか自滅的で滑稽さを滲ませているのが印象的だ。リアルな社会とネットの世界で自身のキャラクターを使い分ける人間の複雑性や、膨大な情報を受け止めるうちに偏った思想を強固にしてしまう様子などSNSのなかで変容していく人間性を取り上げて、モンスター化していくキャラクターと重ね合わせている。
社会システムと人間の進歩スピードが乖離していくことで人間側がシステムのコントロールを失っている状態や、感覚の共有が進むことで個性を放棄していくだろう人間社会の未来予想図など、扱うテーマはシニカルだが、独特の諧謔的表現からは強い社会批判は感じられない。それよりも、どこか可愛らしく憎めないキャラクターを通して、人間社会への強い好奇心と深い親しみを感じることができる。(沓名美和 / 現代美術史家、アーティスト、キュレーター©︎kutsuna miwa)