ノルウェーを描く
今回展示されている新作は、昨夏にノルウェーで南条が行ったアーティスト・イン・レジデンスが基となっています。約1か月間、ノルウェー北部の街ボードーに滞在し、フィヨルドの海岸や郊外の山水、落ち着いた街並みなどを取材して滞在中や帰国後に描いたものです。
少しもやがかかったような北欧の空をバックにくっきりとシルエットを見せる大聖堂の尖塔。第二次世界大戦で焼けた後に再建された聖堂のファサードは画面の外に隠されており、生き残りの象徴のような鐘楼だけが夕暮れの鐘の音を響かせています。
こちらは散策の途中で偶然出会ったという湖と山のある風景。日本では出会うことのなかったパノラミックで「映画のような」シーンに素直に驚いたといいます。場所性にこだわる作家は、その場で採取した土を持ち帰ってきました。これを乾かし、ふるいにかけて、顔料並みの粒子に精製したものをメディウムに混ぜて塗ります。同じノルウェーの土でも一様の濃淡ではなく、それぞれの作品に微妙な差異が生まれてきます。
これまで富士登山や伊勢詣などいわゆる名所と呼ばれる土地に出かけていっては描き続けてきた南条。江戸期から現代に至る日本人独特の風景観がある種の宗教的な意味合いを帯びていったのではないか?と問いかけています。そこには見えるものを描くだけの風景画ではない作家の姿勢が垣間見えます。そうした視点で改めてノルウェーでの新作を見回すと、地元の人にとって近い存在の山、湖、街並みが少し違ってみえてくるかもしれません。
作家の様々なモチーフを一堂に見られるこの機会をお見逃しなく!
Steigtndvatnet / 山と湖