松や梅などの庭先の樹木が黒い墨のタッチで画面いっぱいに描かれている。和紙の裏側から大きな筆で一つ一つ楕円形の墨を置いてゆき、紙の表面ににじんだ痕跡が作品となるこの手法は、偶然をきっかけに生まれたものだという。以来10数年にわたり作家は入念な写生を基に何回となくこの手法を繰り返し、そのたびに少しずつ異なったテクスチュアを作り出してきた。屏風などの大画面も手掛け、現代の水墨画の一つの在り方と位置づけられて美術館に展示される機会も多いが、最近の作家は青色を中心とした色を加えてモノクロの世界から一歩踏み出すなど新たな挑戦を続けている。
竹中美幸は初期では余白をいかした柔らかな色彩で描く種子のシリーズを描いていた。その後竹中の主軸をなすようになった樹脂の作品は、雫型の樹脂を数枚のアクリル板にたらした層アクリル板にたらしたもので、光を反射しその影を落とす。水彩絵の具で描かれた繊細なにじみとともに影が映りこみ、作品外部にある光の条件を取り込んで、様々な表情をなげかけてくる。竹中の作品は一貫してその作家性を主張しながらも空間に柔らかくとけこみ、パブリックスペース、住宅を問わず幅広い場に調和し、新たな空間を創出する。2013年にはフイルムに恣意的に光を露光することで色を与え、それを複数の層として重ねることで見えないはずの光、あるいは光によって初めて見えるようになるはずの何かをフイルムという物体を通して可視化する作品も発表した。