幼い頃から古びた神社などを好んで描いていたという元田は、リトグラフの手法で建物が廃墟と化した姿を表現し、未来における過去の記録としての都市を描き続けている。誰もが知っているようなランドマークをモチーフとし、都庁、銀座等の東京、北京オリンピックの鳥の巣、シドニーのオペラハウスやシンガポールのマリーナなどが半ば元の姿を残しつつも、放置され風化する中でまるで自然の一部へと戻っていうようなテクスチュアが細かい線と陰影により巧みに創出される。熊本出身の作家が初めて上京したときに抱いた違和感、アウトサイダーの眼差しを保ちつつも、廃墟を通して都市が再生していく兆しを美しく表現したいという。
一見して絵画のような平面作品は、シルクスクリーンによるもので、画面に無数の細かい菱型が並ぶように版を制作し、色を変えながら60回から100回重ね刷りあげる。数ミリの高さに積みあがる「インクの柱」をもとに独自の表現方法を追求し、2015年VOCA賞に輝いた。また小野は立体やインスタレーション作品も手掛け、インクの柱を動物の頭蓋骨に一本一本植え付けた鱗頭シリーズやセミの抜け殻を使った徒花シリーズなどがあり、平面と立体の間を往来しながら版画で可能な表現の領域を広げている。