この度、アートフロントギャラリーでは大杉弘子個展「書界 さい」を開催致します。
文字が生まれた時の記憶を呼び起こす。
大杉弘子さんの作品は初源的な問いをいつも私たちに突きつける。
しかしながら、その作風は、よどみなくおおらかで、どこまでも拡がりあり清々しい。
中国の古墨を用いて描かれた青い画面からは、根底に文字のDNAを密(ひそ)みながら、それが文字であることはどうでもよくなって、ジャクソン・ポロックの絵を見たときのようなすべてを削ぎ落とされたような感覚で、直截的に心に響いてくる。
詩人の和合亮一氏は震災後、大杉さんの作品に感応して六編の詩を書いている。
私 も
あ な た も
ふ る さ と も
た っ た
一 つ だ
だ か ら
一 瞬 を
一 日 を
一 生 を
一 歩 を
一 心 に
生 き る
「フクシマより」 和合亮一
国際的な視野を持ちながら、書とコンテンポラリーの境界を果敢に歩みつづける大杉さんの新しいテーマは、崇敬する文字学者白川静博士が発見した「さい」を根底としたものだ。「さい」は祝りを収める器の形。神への捧げものだ。
意識の変化と気づきを根底から問うた震災。空っぽの「さい」に捧げるものは何か?
大杉さんの鎮魂の祈りの書界が生きることへの意味を問う。
アートフロントギャラリー 木田秀美