浅見貴子 – 未然の決断

会期終了

2021年11月20日 - 12月5日

変容
2650×206mm
墨、顔料、樹脂膠、白麻紙
この度アートフロントギャラリーでは、浅見貴子の個展を開催致します。
営業時間水~金 12:00-19:00 / 土日 11:00-17:00※短縮営業
休廊日月曜、火曜
作家在廊11月20日(土)13:00-17:00

浅見貴子 表現者から創造者へ

高階秀爾大原美術館館長

私が浅見貴子の作品にはじめて接したのは、2010年、大原美術館の若手芸術家支援プロジェクトのひとつであるARKO (Artist in Residence, Ohara) 事業の招聘者として浅見を招いた時のことである。その時浅見は、倉敷の街から少し離れた児島虎次郎の旧邸、無為村荘を制作の場として、当初はまず庭の松の木のスケッチに没頭した、それによって樹木の形状位置のみならず、周囲の空間をも充分に捉えた後に、紙面の裏から大小濃淡さまざまの墨線墨点でその存在を再現した。結果は見事なもので、一見墨跡としか思われないものの中から、確かな存在として樹木が出現し、同時に周囲の空間、そこに溢れる光や空気まで立ち表れて来る。
それから10年後、東京の中村屋サロン美術館で開かれた浅見貴子展「変容のプロセス」で、また改めて驚かされた。会場にはかつて無為村荘で制作された作品などもあったが、それと同時に「gray net」と題された作品が展示されていた。「gray net」とは、アトリエの窓から網戸越しに見える光景を描き出したものである。網戸だから庭を眺める妨げにはならない。しかし意識の上では網戸は空間をこちら側とあちら側に分断する。その分断を避けるため、浅見は画面に網戸の網目格子をも取り入れた。それによって画面は、「あちら側」の空間ではなく、あちら側もこちら側もないひと続きの、確かな存在感を持った絵画空間を生み出した。浅見貴子は、新しい空間の創造者となったのである。

出展作家

浅見 貴子Takako Azami

松や梅などの庭先の樹木が黒い墨のタッチで画面いっぱいに描かれている。和紙の裏側から大きな筆で一つ一つ楕円形の墨を置いてゆき、紙の表面ににじんだ痕跡が作品となるこの手法は、偶然をきっかけに生まれたものだという。以来10数年にわたり作家は入念な写生を基に何回となくこの手法を繰り返し、そのたびに少しずつ異なったテクスチュアを作り出してきた。屏風などの大画面も手掛け、現代の水墨画の一つの在り方と位置づけられて美術館に展示される機会も多いが、最近の作家は青色を中心とした色を加えてモノクロの世界から一歩踏み出すなど新たな挑戦を続けている。