阿部岳史 個展 デッドパン

会期終了

2016年1月8日 - 1月31日

Sign of Ghost #02 (部分)
2015年 / 1750×1300×40 mm / 木材
この度アートフロントギャラリーでは、阿部岳史の個展「デッドパン」を開催致します。
阿部岳史の作品、プロフィールについてはこちらをご覧ください。
 茫洋とした画面に近づくと木製キューブの連なりが目に飛び込んでくる。阿部岳史は風景や人物を写真で撮影し、パソコン上で画像を分解、色見本に従ってカットしたキューブに着色する。実際にない色を加えるなどして、多くの人がどこかで見たことがあるような曖昧な記憶の像を紡ぎだしていく。東北芸術工科大学で彫刻を学んだ後、15年以上もこの方法で様々な平面を創り出してきた。描かれるモチーフは人物の立ち姿や外国人風の少年少女、電車の中で座っている乗客、木漏れ陽、ランドマークを含んだ街など多岐にわたる。何気ない日常の風景を切り取っているかのようにみえるが、情報量が少ない分、見る人自身が記憶を再構築していくことで作品が完成する。
 しかしどんなモチーフでも作品化するのにふさわしい訳ではないという。シンプルな手法だけに、対象の写真さえあれば何でもドットに落とせるというデザイン作業に陥るのではなく、具体的な写真から記憶の対象を起こしていくプロセスを温存しつつ自分の頭の中の記憶の構造そのものを作品化したいと阿部は語ったことがある。また、立体やインスタレーションの方が概念から出発しやすいとも。その一つの形が今秋六本木のパブリックスペースに展示された「DEADPAN」 といえるだろう。
 真鍮でできたグリッドが面を成し、その面が何層にも重なることで有機生命体しか持ちえない曲線、曲面に限りなく近づいていく。グリッドは内部に空間を包容する細胞のように隙間なく繋がって全体を構成する。さらにその浮かんだ頭蓋骨の向こうに見慣れた風景が透けて見え、死のフィルターを通してみえる現実が、ひっそりと佇む「淡い死」を逆照射している、そんな作品に思われる。「死は案外身近な存在かもしれない」というメッセージは、都会の雑踏の中で、あるいはギャラリー空間の中で静かに、しかし強く、作家の体験と重ね合わせてつきつけられるだろう。
 対象を分解して再構築する作業を通して様々な可能性が広がっている。現在の立ち位置に安住することのない作家の挑戦を4年ぶりの個展で見ていただけることを願う。
営業時間11:00 - 19:00 (月休)
会場アートフロントギャラリー(代官山)
レセプション2016年 1月8日(金)18:00-20:00
作家在廊日1月8日, 9日, 10日, 14日, 17日 (午後から)

みどころ

Sigh of Ghost #02

出展作家

阿部 岳史Takeshi Abe

阿部は人物の肖像や風景を写真に撮り、パソコン上で画像に分解、色見本に沿って木製のキューブを着色することで曖昧な平面を創り出す。阿部岳史の作品から伝わってくるのは、人の記憶や感情、気配などあいまいで不確かなものの存在です。着色されたキューブの几帳面な配列によって表されているのは、主に人物や風景ですが、それぞれが持つ固有の特徴を限りなく削り落とした姿です。色の配列としての情報だけが再現されることで、阿部が選んだ対象物はモザイクとなり人物や風景を特定する特徴や詳細が取り除かれていきます。こうして色のキューブとなった断片の集合は、鑑賞者それぞれの記憶の中のピースで補完されてふたたび像を結び、匿名的(アノニマス)な存在から鑑賞者にとって固有の「だれか」「どこか」へと還元されていきます。機械的でドライな作風に見えますが、人の中に眠る記憶を引き出して視覚と認識の間にあるごく個人的な感情を揺さぶります。