阿部岳史 – 幽玄

会期終了

2011年11月15日 - 12月4日

写真:Day Dream #41(部分)、2011年、木製キューブ、2300×650×50mm
この度、アートフロントギャラリーでは、「阿部岳史 - 幽玄」を開催致します。
作家の詳しいプロフィール、作品については下記リンクにある作家ページをご覧ください。
小さな着色された立方体を一定の間隔で壁に貼る。細やかな仕事である。近くから見るとキューブにしか見えないが、遠くから見て始めてそれが写真のような精巧な絵に見えることに気がつく。虫眼鏡で初めて印刷の網点を見たときの驚きに似ている。あるいはチャック・クローズの分解された色が集合してひとつの大きな人物像をなす作品をも連想する。それでも印刷の網点やクローズの作品と阿部の作品の違いについて、実際の作品をVOCA展でよく見るまではなかなか説明ができなかった。
阿部のグリッド上に配置されたキューブには必ずといっていいほど隙間があり、壁面を作品の一部に取り込んでいる。そこに立体であるキューブが必ず影を落とす。私たちが作品に近づいたり、対峙する角度を変える度に、立体のキューブは見え方が変わり、壁に落ちた影も変わって見えてくる。鮮明さを目指す印刷技術と異なり、阿部の作品は鮮明でありえない。いつまでも不鮮明であり、像そのものが揺れ動いてしまうのである。描かれているのが何かということについては男だか女だかは判別がついても誰であるかはわからない。おそらく誰でもない不鮮明な誰かなのである。これらの作品では、色のついたキューブというシステムを使っているだけであって、本来は装置としてシンプルなシステムを使って図像を表現する試みこそ、阿部の作品の面白さなのだと思う。
今回の展覧会ではキューブを使った平面の作品とともに、立体作品が展示されることになる。基本形がキューブであることを考えてみれば、初めから立体を志向している作家なのである。ダニエル・ビュレンの例を挙げるまでもないであろう。基本のシステムを変えなくとも、平面に貼り付けられた作品を置き換えて立体空間に配置したり、色を光に置き換えたりすることでいくらでも新たな作風を開拓できるであろう。阿部岳史の現在の作品群からさまざまな可能性に広がる膨大なシステムのバリエーションを予感していただける展覧会になると思う。    
アートフロントギャラリー 近藤 俊郎
営業時間11:00~19:00 (月休)
会場アートフロントギャラリー
作家在廊日11月19日(土)、23日(水・祝)

出展作家

阿部 岳史Takeshi Abe

阿部は人物の肖像や風景を写真に撮り、パソコン上で画像に分解、色見本に沿って木製のキューブを着色することで曖昧な平面を創り出す。阿部岳史の作品から伝わってくるのは、人の記憶や感情、気配などあいまいで不確かなものの存在です。着色されたキューブの几帳面な配列によって表されているのは、主に人物や風景ですが、それぞれが持つ固有の特徴を限りなく削り落とした姿です。色の配列としての情報だけが再現されることで、阿部が選んだ対象物はモザイクとなり人物や風景を特定する特徴や詳細が取り除かれていきます。こうして色のキューブとなった断片の集合は、鑑賞者それぞれの記憶の中のピースで補完されてふたたび像を結び、匿名的(アノニマス)な存在から鑑賞者にとって固有の「だれか」「どこか」へと還元されていきます。機械的でドライな作風に見えますが、人の中に眠る記憶を引き出して視覚と認識の間にあるごく個人的な感情を揺さぶります。