鴻崎正武 – 未来の郷

会期終了

2016年7月22日 - 8月21日

TOUGEN Space
810×1620 mm / パネル、麻紙、岩絵具、アクリル、箔
この度アートフロントギャラリーでは、 鴻崎正武の個展を開催いたします。
 鴻崎正武は1972年、福島県に生まれ、2005年に東京芸術大学大学院博士課程を修了。2000年にUBS Art Awardで注目され、2004年には第13回青木繁記念大賞展にて大賞を受賞。現在は東北芸術工科大学准教授として教鞭をとりながら制作発表を続け、海外でも継続的に作品を発表するなど活動範囲を広げている。
 鴻崎の作品は洛中洛外図あるいは南蛮屏風のようなきらびやかな金箔の雲を配した構図に人工衛星や日常の道具、遺伝子組みかえによって生み出されたかのような異質なもの同士が掛け合わされた異形のものたちが描かれている。学生時代にヒロニムス・ボスに強く影響を受けた鴻崎は、桃源郷から引用した「TOUGEN」シリーズにおいて価値観の多様化した現代における私たち個々人のさまざまな夢や「理想」が混在する世界のありようを一貫した作風で見せてきた。
 そして鴻崎は今、現代の世界を俯瞰して表現するのに留まらず、何もしなければ忘れられるだけかもしれない自分を含めた市井の人々の生き様を表現として留めようとしているのではないだろうか。昨年末、鴻崎は地元の双葉町をテーマとした作品を町に寄贈した。その画面のなかには国指定史跡「清戸迫横穴」にある装飾横穴朱色壁画や、安産祈願で有名な十一面観音坐像、海水浴場としてにぎわった郡山海岸などが描かれ、町の名所として残る大昔からその土地で暮らしてきた人々の生活や願いや楽しみの象徴的な場所が作品となった。こうした人々の記憶に残る場所は単にその場所に縁があるだけでなく、「故郷」の意味がまったく変質してしまった町の人々の複雑な思いを代弁しているかのようだ。そして先のみえない廃炉問題などを含めて風化させてはおけない現実に対し、作家として何か発信しなくてはいけないという新たな主題の模索がうかがえる。震災前後から、そうした意識の変化があったようだが、いよいよ具体化してきているようなのである。
 これまで作品に描かれるモチーフは先述したとおり人間の欲望のままハイブリット化した異形のものたちが主であり、欲望や理想の実現が夢ではなく現実になりえる現代の恐ろしさを垣間見るようであった。一方で「だるま」や「こけし」といった民芸品がモチーフとして登場する作品はより具体的な地域性を鑑賞者に想起させる。モチーフの掛け合わせ方ではなく、モチーフの出自あるいは背景を問題とすることで、確立された作風とあいまって鴻崎の新しい世界観が開けているようだ。作品の主題として自身が築き上げた「TOUGEN」の世界にいかにして作家自身の現実感との接点を見出していくのか、またそれがひいては鑑賞者の現実との接点となっていくのだろうと思うが、今回の個展は具体的な挑戦の一歩となりそうだ。
営業時間11:00 - 19:00 (毎週月曜、8月13、14日休廊)
レセプション2016. 7. 22 (金) 18:00 - 20:00
作家在廊日8. 5(金)、8. 6(土)、8. 20(土)、8. 21(日) いずれも午後から

みどころ

MAKYO Daruma -ser. Hikyo No.9-
HIKYO Haguro -ser. Hikyo No.13-

出展作家

鴻崎 正武Masatake Kozaki

鴻崎の描くTOUGEN は古代中国の理想郷桃源に端を発し、ヒエロニムス・ボッシュや南蛮屏風、洛中洛外図を思わせる構図や金箔の使用が認められる。しかし近寄って細部を見ると、描かれているものは中世の異形や奇怪な動物、あるいは未来の乗り物や遺伝子の掛け合わせでできたような動植物であり、その有様は科学技術の行き過ぎた結果としての文明に警鐘をならしているようにも見える。また東北大震災によって郷里の福島県が被災した経験を受けて、東北芸工大の学生たちも交えて「東北画」は成立し得るのかという問にも真摯に向き合っているようだ。赤べこやこけしが近作の画面に散見されるのはその表れかもしれない。