Art Front Selection 2022 summer

会期終了

2022年8月5日 - 8月28日

鈴木ヒラク《隕石が書く/The Writing of Meteors #01》
2022年  1000x 750x 85mm / キャンバスに石(ボルト止め)、シルバーインク、土、アクリル
《Summer Selection 2022》として、活躍中のギャラリー作家の作品を一堂に会します。鈴木ヒラクの新作3点のほか、大地の芸術祭、瀬戸内国際芸術祭など各地で開催されている芸術祭の参加作家に焦点をあてた展示となります。
鈴木ヒラクの新作シリーズ、《隕石が書く/The Writing of Meteors》は、アクリルと土を混ぜた黒い下地の上に、作家が様々な場所で自ら拾ってきた石をボルトで止め、光を反射するシルバーのインクで線や点を描いている作品です。フランスの思想家ロジェ・カイヨワの著作《石が書く》になぞらえたタイトルが示すように、中心に置かれた石の周囲に発散される光の軌跡のようなドローイングには、文字や記号にもみえる要素が含まれています。作家は、「自分はずっと記号の発生に関心があり、いま生きている環境のなかでいかに新しい記号を発掘するかということを考えているのです。とくに日本は象形文字である漢字の文化圏で、かつて未分化だった『えがく』と『かく』のあいだに対する感受性を持っています。」と述べており、絵と文字の境界を探っていく作家の姿勢が反映されています。特にこの作品では、匿名の石が内包する長大な時間や、石で出来ている星の軌道の線に触発されながら、宇宙時代における「描く/書く」行為の新たな可能性についての考察を行っています。
同じスペースで、大地の芸術祭で新たなインスタレーションを発表している、川俣正・藤堂・椛田ちひろ・安野太郎の新作・近作もご覧いただけます。
また、夏会期が8月5日に開始される瀬戸内国際芸術祭、および周辺の美術館での企画展に参加している作家、冨安由真・南条嘉毅・大岩オスカール・村山悟郎・Mounir Fatmi等の作品も展示しています。中でも大岩オスカールは建築家、坂茂と協働し、男木島の見晴らしのよいところに建てられた男木島パビリオンの壁画を制作しました。海をみおろすガラス窓3枚に描かれた海の絵はスライドで重なり合い、また襖絵にも風景が展開しています。男木島の別の古民家を描いた作品を今回展示します。
ギャラリーでの作品との出会いが、芸術祭などへの旅の誘いにもなることを願っています。
営業時間水~金 12:00 - 19:00 / 土日祝 11:00 - 17:00
休廊日月曜、火曜日

みどころ

川俣正《Tsunami No.16》2016
椛田ちひろ《それが正確になった時、問題点から遠ざかる》2012
安野太郎《COMPOSITION FOR COSMO-EGGS 'Singing Bird Generator' スコア》2020
冨安由真《Girl》2015
ムニール・ファトゥミ《Calligraphy of Fire》2017
大岩オスカール《Ogi House 5》2016
大巻伸嗣《Echoes-Infinity》2013
村山 悟郎《生成のドローイング[Rhizome]- 黄土・黄・緑》2022
南条 嘉毅《坂出市》2019
藤堂《Snow on the roof - 松之山黒倉》2022

出展作家

ムニール・ファトゥミMounir Fatmi

1970年、モロッコのタンジェ生まれ。市内で最も貧しい地区のひとつ、カサバラタ地区の蚤の市で幼少期を過ごす。廃棄物や廃品が過剰に増殖する環境。後に作家は、この幼少期を最初の芸術教育としてとらえ、この蚤の市を廃墟と化した美術館や、社会を理解するためのバロメーターに例えた。ファトゥミは、危機的状況にある社会におけるアーティストとしての自分の役割を常に意識している
これらのビジョンから、彼の芸術作品の本質的な側面が浮かび上がってくる。もはや使われなくなったメディアと産業・消費主義文明の崩壊というアイデアに影響され、彼は芸術作品をアーカイブと考古学の中間に位置づけている。
アンテナケーブル、タイプライター、VHSテープなどの素材を用いて、ムファトゥミは、危機的状況にある社会における世界とアーティストの役割に疑問を投げかける。彼は、建築、言語、機械からなる三位一体のプリズムを通して、そのコードに捻りを効かせ、テクノロジーの歴史とポップカルチャーにも影響を受けている。その結果、モーニル・ファトミの現在の作品を、制作中の未来のアーカイブとして見ることもできる。それらは現代史における重要な瞬間を表しているが、これらの技術的な素材は、知識の伝達やイメージの暗示的な力をも問いただし、テクノロジーやイデオロギーに縛り付ける幻想的なメカニズムを批判している。
第5回光州ビエンナーレ、第10回リヨン・ビエンナーレ、第5回オークランド・トリエンナーレ、第10回・第11回バマコ・ビエンナーレ、第7回深圳建築ビエンナーレ、瀬戸内国際芸術祭、越後妻有トリエンナーレ。彼の作品は、チューリッヒのミグロス美術館、ジュネーブのMAMCOなど、数多くの個展で発表されている。MAMCO、ジュネーブ。ピカソ美術館(ヴァロリス)。AKバンク財団、イスタンブール。美術館クンスト・パラスト(デュッセルドルフ)、ヨーテボリ・コンストハーレ。グループ展では、ポンピドゥー・センター(パリ)、ブルックリン美術館(ニューヨーク)、パレ・ド・トーキョー(パリ)、MAXXI(ローマ)、森美術館、岐阜県美術館、東京都庭園美術館、マトハフ(ドーハ)、ヘイワード・ギャラリー、ヴィクトリア&アルバート美術館(ロンドン)、ファン・アッベミュージアム(アイントホーフェン)、ナッシャー美術館(ダーラム)、ルーヴル・アブダビなど。
アムステルダムのウリエット賞、2006年の第7回ダカール・ビエンナーレのレオポルド・セダール・センゴール大賞、2010年のカイロ・ビエンナーレ賞、2020年のアルタイ・ビエンナーレ(モスクワ)の銀盤賞など、数々の賞を受賞。

冨安 由真Yuma Tomiyasu

冨安由真は、我々の日々の生活における現実と非現実の狭間を捉えることに関心を寄せて創作活動をおこなう作家です。科学によっては必ずしもすべて説明できないような人間の深層心理や不可視なものに対する知覚を鑑賞者に疑似的に体験させる作品を制作。大型インスタレーション作品では、そこに足を踏み入れた鑑賞者は、図らずも自分自身の無意識の世界と出会うかのような体験を得るかもしれない。

南条 嘉毅Yoshitaka Nanjo

2002年に東京造形大学研究科(絵画)を修了後、東京を拠点に活動し、2007 年の観音寺市でのレジデンスプログラムへの参加以降は中之条ビエンナーレや水と土の芸術祭、また国内外のアートフェアでも紹介されるなど徐々に活動の場を広げている。2012年の越後妻有アートトリエンナーレでは土の美術館「もぐらの館」において土を用いたペインティングをキャンバスのみならず窓ガラスなどにも展開して展示。
風景を主題としている南条の作品の大きな特徴として、絵具で描かれる部分と、描かれている現場の土を使った部分とがある。作家はその場所を自ら訪れ、訪れた場所の魅力や歴史や日常などに基づき、、土を採取し、そうして持ち帰ったさまざまな情報を分析して絵画に落とし込む。2016年アートフロントでの展示では、ノルウェイのレジデンスで創作した現地の土を使った平面作品のほか、富士塚をめぐる新作のインスタレーションを発表した。

大岩 オスカールOscar Oiwa

物語性と社会風刺に満ちた世界観を、力強くキャンバスに表現するアーティスト。独特のユーモアと想像力で、サンパウロ、東京、ニューヨークと居を移しながら制作を続けている。サンパウロに生まれ、建築学科を卒業した作家は、東京の建築事務所で働きながらアーティストとしても活動。奨学金を得てニューヨークに移り住み、現在も米国を拠点としている。大岩はよく旅をし、移動しながら複数の文化に根差した自らのアイデンティティを模索しているように思われる。緻密なタッチや鳥瞰図的な構図を使い、新聞記事やネットの中に社会問題の糸口を見出し、入念なリサーチをもとに大画面をしあげる彼の作風のファンは多く、国内外の多くの美術館で作品が収蔵されている。2019年の金沢21世紀美術館での個展には15万人以上の来場者があった。

安野 太郎Taro Yasuno

安野太郎は1979年東京生まれ。日本人の父親とブラジル人の母親との間に生まれたハーフ。あらゆるメディア、テクノロジー、手段、方法で、音楽そのものをあり方から問い直し続ける作曲家として活躍。代表作に、「音楽映画」シリーズ、「サーチエンジン」、「ゾンビ音楽」シリーズ等。2枚のCD「DUET OF THE LIVINGDEAD」「QUARTET OF THE LIVINGDEAD」をpboxxレーベルよりリリース。近年は作曲家の枠を超えて現代音楽とインスタレーションが融合した展示型音楽作品を発表し始め、音楽、美術の両面において受賞をしている。昨年は服部浩之氏のキュレーションによる第58回ベネチアビエンナーレ日本館代表作家のひとりに選出され、国際的な舞台でその才能が輝き始めた。注目の作家である。

川俣 正Tadashi Kawamata

1982年にベネチアビエンナーレに参加して以来、世界を舞台に活躍する川俣の作風は「製作プロセスそのもの」も作品であるということである。川俣の手がける大がかりなプロジェクトではアパートや公共空間に材木を張り巡らし、空間そのもののとらえ方を作品として見せているが、そこでは観客の動きまでもが作品のプロセスとなる。プロジェクトを実施するために作られる模型や平面レリーフもそうした意味でプランではなく一つ一つがそこに至るプロセスを抱えた作品だと言える。インスタレーションという手法をいち早くとりいれた川俣だが、最近個別作品の人気も高まっている。

椛田 ちひろChihiro Kabata

黒色ボールペンでインクジェット紙などの上に不定形なかたちを描くことで知られる作家。ボールペンの動きは繊細かつ力強く、独特の質感が海外でも人気を博し、これまでシンガポール、中国、スイスなど様々な場で展覧会が行われてきた。最近の個展では石を置いて光をあて、多方向にできる影をボールペンでトレースし、石が辿ってきたみえない時間を視覚することに成功した。ボールペンのほか、指と手で描く油彩画、樹脂を鏡の上に垂らすドローイングなども手掛け、表現の幅を広げるだけでなく、自身のボキャブラリーを駆使して空間をつくっていく可能性を模索し続けている。

藤 堂TODO

藤堂の作品の背景には常に時間がある。その作風は「場所の固有性」をテーマに自ら歩いて集めたものを中心に創造され、様々な形態を持つ。もっとも代表的な作品はドイツ滞在時に制作されたもので、世界各国にある史実を刻んだ土地の石を切断しその切断面に積層ガラスを埋め込み磨き上げたものである。バサルト・シリーズでは玄武岩を使って列柱状のインスタレーションも行うが、これはヨーゼフ・ボイスがドクメンタ7で始めた「7000本の樫の木」プロジェクトからインスピレーションを得たものだという。また、本のシリーズでは西洋の哲学書・小説・聖書や讃美歌などを扱い、積層ガラスをはさむ方法とページを樹脂で固める二種類の方法で作品を制作している。デュッセルドルフに10年以上住み、肌で感じた西欧文化と日本の美意識が融合されている藤堂の作品は、国内外で人気が高い。東日本大震災を機に制作拠点を日本に移してからは、社会の新陳代謝の中で消えていく名建築の瓦礫や故郷の宇和島で養殖された真珠を用いた作品も発表している。

金氏 徹平Teppei Kaneuji

1978年京都府生まれ。モチーフは主に日常的なイメージをはらむフィギュアや雑貨。現代社会で再生産され続ける情報のイメージを、リズミカルに反復と増幅を繰り返し展開させることで注目を集める。個々の物体が持つ本来の意味が無視されて繋げられることで、思いもしなかったダイナミックな表現がもたらされている。

鈴木 ヒラクHiraku Suzuki

1978年生まれ。東京芸術大学大学院美術研究科修了後、シドニー、サンパウロ、ロンドン、ニューヨーク、ベルリンなどの各地で滞在制作を行う。'描く'と'書く'の間を主題に、平面・彫刻・壁画・映像・パフォーマンスなど多岐にわたる制作を展開。時間と空間における線の発掘行為を通して、ドローイングの拡張性を探求している。国内外の美術館で多数の展覧会に参加する他、音楽家や詩人らとのコラボレーションや、大規模なパブリックアートも数多く手がける。2016年よりドローイング研究のためのプラットフォーム「Drawing Tube」を主宰。主な作品集に『SILVER MARKER』(HeHe、2020年)、『GENGA』(河出書房新社、2010年)などがある。