アートフロントギャラリーでは、今年開催される奥能登国際芸術祭2023に先駆けて南条嘉毅がキュレーション・演出を手掛けた芸術祭の主要施設「スズ・シアター・ミュージアム」より3人の作家(南条嘉毅、竹中美幸、久野彩子)を選出したグループ展を行います。
本展は、芸術祭をきっかけに集まった作家がどのようにその地域を捉え、可能性を見出していったのか、その後のそれぞれの制作にどのような影響を与えているのか、新たな視線を感じられる展覧となります。
南条嘉毅はかつて土を使った絵画を描く作品を作っていましたが、芸術祭を機会に表現方法が拡張していきました。現在は、空間構成に光と音を加えた演劇性のあるインスタレーションを主にしています。本展ではインスタレーションを通して試みてきた時間表現を古い家具を用いた立体作品として発表します。
みどころ
竹中美幸は樹脂やフィルムといった透明素材を通した光を主な材料として表現をする作家です。今話題の歌舞伎町タワーではシネマ座の空間を彩るメイン作品を担当しました。珠洲では、ディレクター北川フラムの「大蔵ざらえ」を機に、あるお宅から出てきた日記や手紙をもとに、かつて珠洲に実在した個人の視点をフィルターとして現在の珠洲を眺めながら、ある家の記憶を作品化しました。今回は、その当時に出会った記録写真や民具の影を35mmフィルムに焼き付けることで、物のそれぞれ背後にあるみえない小さな物語と共にフィルムに記録する作品を作ります。
竹中美幸《影》久野彩子は細密鋳造という工芸の技術を用い都市風景を想起させる彫刻を作る作家です。普段は、小さな彫刻作品や、ジュエリーなどをその主戦場としてきましたが、奥能登への参加を機会に既存のファウンドオブジェクトとの融合を試み空間的な表現が可能となりました。今回は奥能登で見つけた壊れた古道具の欠けた部分を、持ち主の記憶を大切にしながら細かな金属で再生していきます。
会期中、珠洲では奥能登国際芸術祭2023(9/23-11/12)が開催され、それぞれの作品は奥能登と関係性をより強固にし、珠洲・代官山の両作品を鑑賞することで、より奥能登の空気感を味わうことができます。
ぜひまずは代官山にて珠洲の空気を反映した作品群をお楽しみください。
久野彩子 参考作品
出展作家
久野彩子は、ロストワックス鋳造技法を用いて作品を制作します。ロストワックスとは、ロウで作った精密なカタチを鋳物に置き換える手法で、久野の作品は硬質で重厚な金属の質感と共に、細部にまで技巧を凝らした表現も併せ持っています。主に「都市」をテーマに、様態を変えながら増殖し、構築されていく都市のうごめく姿を想起させる久野の作品は、堅牢な金属に施された高密度の造形美を表現します。
2002年に東京造形大学研究科(絵画)を修了後、東京を拠点に活動し、2007 年の観音寺市でのレジデンスプログラムへの参加以降は中之条ビエンナーレや水と土の芸術祭、また国内外のアートフェアでも紹介されるなど徐々に活動の場を広げている。2012年の越後妻有アートトリエンナーレでは土の美術館「もぐらの館」において土を用いたペインティングをキャンバスのみならず窓ガラスなどにも展開して展示。
風景を主題としている南条の作品の大きな特徴として、絵具で描かれる部分と、描かれている現場の土を使った部分とがある。作家はその場所を自ら訪れ、訪れた場所の魅力や歴史や日常などに基づき、、土を採取し、そうして持ち帰ったさまざまな情報を分析して絵画に落とし込む。2016年アートフロントでの展示では、ノルウェイのレジデンスで創作した現地の土を使った平面作品のほか、富士塚をめぐる新作のインスタレーションを発表した。
竹中美幸は初期では余白をいかした柔らかな色彩で描く種子のシリーズを描いていた。その後竹中の主軸をなすようになった樹脂の作品は、雫型の樹脂を数枚のアクリル板にたらした層アクリル板にたらしたもので、光を反射しその影を落とす。水彩絵の具で描かれた繊細なにじみとともに影が映りこみ、作品外部にある光の条件を取り込んで、様々な表情をなげかけてくる。竹中の作品は一貫してその作家性を主張しながらも空間に柔らかくとけこみ、パブリックスペース、住宅を問わず幅広い場に調和し、新たな空間を創出する。2013年にはフイルムに恣意的に光を露光することで色を与え、それを複数の層として重ねることで見えないはずの光、あるいは光によって初めて見えるようになるはずの何かをフイルムという物体を通して可視化する作品も発表した。