2026年2月9日

戦後日本の美術批評の地平を切り拓き、2011年3月、東日本大震災の直前に逝去した中原佑介。その膨大な仕事を集成した『中原佑介美術批評選集』が、このたび完結を迎えます。震災と原発事故、パンデミック、気候変動、国際情勢の危機、そして揺らぐ民主主義―この15年、私たちの世界は大きな転換を経験してきました。こうした時代に、私たちはいまどこに立ち、どこへ向かおうとしているのか。湯川秀樹のもとで理論物理を学び、美術批評へと転じた中原佑介は、美術を通して社会や時代と向き合い、分野を越えて思考することの重要性を示し続けました。その思想と実践は、今日においてなお、私たちにとって重要な道標になるはずです。中原が晩年に美術の希望を見出した越後妻有・大地の芸術祭から四半世紀を経たいま、美術の可能性と社会との関係をあらためて問い直す場を、多様な参加者とともにひらきます。
中原佑介没後15周年「中原佑介美術批評選集」完結記念シンポジウム
私たちはどこへ行くのか―「中原佑介」を起点に
日時:2026年3月18日(水)18時~20時
会場:ヒルサイドプラザ(東京都渋谷区猿楽町29-10)
料金:1,500円
会場にて「中原佑介美術批評選集」を特別価格でご購入いただけます。
お申込:Peatix(https://artfront-nakahara-symposium.peatix.com)よりお申込みをお願いします。
出演:
加治屋健司(東京大学大学院教授)/北川フラム(アートフロントギャラリー代表)
成相肇(東京国立近代美術館主任研究員)/布施琳太郎(アーティスト)
細淵太麻紀(BankART1929代表)/光田ゆり(多摩美術大学教授)
主催:アートフロントギャラリー、BankART1929
共催:現代企画室
お問合せ:アートフロントギャラリー
■プログラム
18:00ー開会
基調報告:加治屋健司(東京大学大学院教授)
「中原佑介美術批評選集』編集を終えて―その思想と実践の変遷」
18:30ーシンポジウム「私たちはどこへ行くのか―<中原佑介>を起点に」
登壇者:北川フラム、成相肇、 布施琳太郎、細淵太麻紀、光田ゆり
モデレーター:加治屋健司
20:00ー閉会
※終了後、アートフロントギャラリー(ヒルサイドテラスA8)にて交流会を開催します。
■中原佑介について
1931年神戸市生まれ。京都大学、同大学院湯川秀樹研究室で理論物理学を専攻。55年修士論文と並行して書いた「創造のための批評」が美術出版社主催第2回美術評論募集第一席に入選、美術批評の道へ進む。以後、批評活動と並行して、数多くの先鋭的な展覧会を企画。70年には第10回日本国際美術展(東京ビエンナーレ)「人間と物質」のコミッショナーを務め、以後日本における国際的な現代美術の展開に大きな影響を与えた。京都精華大学学長、水戸芸術館美術部門芸術総監督、兵庫県立美術館館長などを歴任。2011年3月3日逝去。享年79歳。同年8月から現代企画室とBankART1929により『中原佑介美術批評選集』刊行開始、2026年3月完結。
■登壇者プロフィール

加治屋健司|かじや けんじ
東京大学大学院総合文化研究科教授、東京大学芸術創造連携研究機構長。表象文化論・現代美術史。著書に『絵画の解放 カラーフィールド絵画と20世紀アメリカ文化』(東京大学出版会、2023年)、編著に『宇佐美圭司 よみがえる画家』(東京大学出版会、2021年)、共編著にFrom Postwar to Postmodern, Art in Japan 1945-1989: Primary Documents (New York: Museum of Modern Art, 2012)、『中原佑介美術批評選集』全12巻(現代企画室+BankART出版、2011―2025年)など。

北川フラム|きたがわ ふらむ
アートフロントギャラリー代表取締役。現代企画室代表取締役。1946年新潟県生まれ。東京芸術大学卒業。「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ」「瀬戸内国際芸術祭」をはじめ、「房総国際芸術祭 アート×ミックス」「下呂Art Discovery」「奥能登国際芸術祭」「北アルプス国際芸術祭」などの地域づくりプロジェクトの総合ディレクションを手がける。2017年度朝日賞、2018年度文化功労者、2019年度イーハトーブ賞他を受賞。

成相肇|なりあい はじめ
東京国立近代美術館主任研究員。一橋大学大学院言語社会研究科修了。府中市美術館学芸員、東京ステーションギャラリー学芸員を経て、2021年から現職。主な企画展に「石子順造的世界」(2011-12年、府中市美術館)、「ディスカバー、ディスカバー・ジャパン」(2014年、東京ステーションギャラリー)、「パロディ、二重の声」(2017年、同)など。著書に『芸術のわるさ コピー、パロディ、キッチュ、悪』(かたばみ書房、2023年)。
.jpg)
布施琳太郎|ふせ りんたろう
アーティスト。スマートフォンの発売以降の都市における「孤独」や「二人であること」の回復に向けて、自らの詩や批評を起点に、絵画や映像作品、ウェブサイトの制作、展覧会のキュレーションなどを行っている。主な活動にプロジェクト「パビリオン・ゼロ」(2025/葛西臨海公園、コスモプラネタリウム渋谷など)、個展「新しい死体」(2022/PARCO Museum Tokyo)、キュレーション展「惑星ザムザ」(2022/小高製本工業跡地)など。著書として『ラブレターの書き方』(2023/晶文社)、詩集『涙のカタログ』(2023/パルコ出版)。

細淵太麻紀|ほそぶち たまき
BankART1929代表/アーティスト。多摩美術大学卒業後、美術・建築ユニット「PHスタジオ」に参画し、国内外のギャラリーや美術館での展示、野外プロジェクト、コミッションワーク、建築設計など多岐にわたる活動を行う。広島県のダム建設地での代表作「船、山にのぼる」は後に映画化された。2004年BankART1929の立ち上げに関わり以降企画運営全般に携わる。2022年4月より前代表の急逝を受け現職。

光田ゆり|みつだ ゆり
多摩美術大学教授。兵庫県生まれ、京都大学文学部卒業後、渋谷区立松濤美術館などで学芸員を務め、2021年から現職、翌年から多摩美術大学アートアーカイヴセンター所長。企画展に「鏡と穴 写真と彫刻の界面」(2017)他多数。著書に『高松次郎 言葉ともの』(2011)『写真、芸術との界面に』(2006)ほか、共著に『History of Japanese Art After 1945:Institutios, Discourses, and Practices』(2023)、『For a New World to Come: Experiments in Japanese Art and Photography, 1968‐1979』(2015)ほか。
■『中原佑介美術批評選集』について
2011年8月、同年3月に亡くなった美術評論家・中原佑介の『中原佑介美術批 評選集』(全12巻)の刊行がスタートしました。本選集は、1955年のデビューから逝去する前年の2010年まで、足かけ55年以上に及ぶ中原の膨大な批評活動から重要な論考を精選し、11のテーマに分けて編んだ、BankART1929と現代企画室による共同出版プロジェクトです。中原は情報通信技術(サイバネティクス)への言及から論を始め、「思考機械」が人間の知的活動を圧倒する であろう将来を正確に予見し、人間が物質に働きかけて「変革」する意識活動である点に、思考機械にはな しえない芸術の役割があると論じました。さらに中原は、批評は単に批評で終わってはならない、それがアー ティストのあらたな創造につながらなければならないと論じます。そこにこそ、中原の批評の真髄がありま した。やがて中原は批評にとどまらず、キュレーター、国際展のコミッショナーとして美術の現場にも深く 関わっていきます。
『中原佑介美術批評選集』編集委員会の代表は故・池田修(BankART1929代表)と北川フラム。第2回配本から編集委員を加治屋健司、 粟田大輔、永峰美佳、書誌・文献調査をアーキビストの鏑木あづさがつとめ、刊行を重ねてきました。月報のインタビューの聞き手・構成は福住廉がつとめています。
【「中原佑介美術批評選集」全12巻概要】
第1巻 創造のための批評 戦後美術批評の地平
第2巻 日本近代美術史 西洋美術の受容とそのゆくえ
第3巻 前衛のゆくえ アンデパンダン展の時代とナンセンスの美学
第4巻 「見ることの神話」から アイディアの自立と芸術の変容
第5巻 「人間と物質」展の射程 日本初の本格的な国際展
第6巻 現代彫刻論 物質文明との対峙
第7巻 メディアとしての芸術 漫画・デザイン・写真・映像
第8巻 現代芸術とは何か 二〇世紀美術をめぐる「対話」
第9巻 大発明物語 芸術と科学的思考
第10巻 社会のなかの美術 拡張する展示空間
第11巻 作家論 西欧・東欧・ロシア・南北アメリカ・東アジア・日本
第12巻 資料編
※定価:2,500円(+税)※次を除く。第1巻、5巻2,400円(+税)、第12巻5,000円(+税)
