2025年を振り返る――北川フラム

2025年12月11日

戦後80年となる2025年が、まもなく暮れようとしています。戦後の世界秩序、そして日本の社会構造が大きな変動期を迎えるなか、この一年を振り返り、北川フラムが語ります。

瀬戸内国際芸術祭を終えて

春に開幕した第6回瀬戸内国際芸術祭は、猛暑の夏を乗り越え、11月9日、107日間の会期を大きな問題もなく終えることができました。行政、スタッフ、サポーターをはじめ、多くの人々がそれぞれの持ち場で力を尽くし、国内外から数多くの来場者が芸術祭を楽しんでくれたことは、何より嬉しいことでした。
世界の10以上の国や地域から瀬戸芸への参加や協働の申し出があったことも、大きな励みになりました。
一方で、交通インフラは国全体で脆弱さが目立ち、瀬戸芸でも船や飛行機などの移動手段に課題が山積していました。なんとか乗り切ったものの、ぎりぎりの運営でした。

今回の瀬戸内国際芸術祭は17の島や地域で展開しましたが、いくつかの場所で将来につながる良い芽も育ちつつあります。小豆島・福田地区に誕生した「瀬戸内アジアギャラリー」は、海で結ばれたアジア各国・地域との関係を、より恒常的な美術を介した交流へとさらに発展させる拠点として期待されています。
初参加となった東かがわ市では、国内生産の90%を占める手袋産業との関わりが生まれました。
また、大島では、高松市が「大島を未来へつなぐ会」を結成し、ハンセン病回復者の暮らす島の将来計画について検討が始まりました。

芸術祭の準備の日々

今年は、来年以降に予定される芸術祭の準備に追われた一年でもありました。芸術祭というものは、本番以上に準備に手間がかかります。
来年9月からは、昨年開催された「南飛騨 Art Discovery」を下呂市全域へと拡大した「下呂 Art Discovery 2026」が始まります。さらに2027年には、千葉県で2つの芸術祭、そして越後妻有の大地の芸術祭が開かれます。それに向けて、各地で視察や打ち合わせが本格化しています。

昨年、地震と水害で甚大な被害を受けた奥能登6市町村では、奥能登国際芸術祭の縁をきっかけに、経済同友会が石川県および国と連携し、アートを軸とした復興の動きが始まりました。震災直後に立ち上げた「ヤッサープロジェクト」が未来への布石となりました。

代官山のまちづくり

私たちの拠点である代官山でも、「防災」を含むまちづくりが前進した年でした。震災が起き、スクランブルがかかったときでも、家族が「代官山にいるなら安心だ。きっとなんとかしてくれる」と思えるような街にしたい。そんな思いで、この20年以上、住む人・働く人・訪れる人が助け合って生き延びられるまちを目指し、祭りやシンポジウム、勉強会を続けてきました。

先月には、代官山地域防災訓練がヒルサイドテラスで行われ、100人近い参加がありました。町会、商店会、住民、在勤者が一体となって行う防災訓練は全国的にも珍しいとのことで、私たちが長年思い描いてきた風景の一端を、見ることができた気がします。

公募「みんなの学校」が問いかけるもの

私たちはこれまで、できるだけ門戸を広げ、未知のアーティストとの出会いを求めて、各芸術祭で毎回作品プランを公募してきました。
下呂 Art Discovery 2026ではさらに広い層の参加を目指し、廃校を舞台にした「みんなの学校」プロジェクトを実施します。アーティストのみならず、かつて子どもだった人々、そして現在子ども真っ最中の小中高生から、「夢の学校」への提案を募ります(締切:2026年1月15日)。

この呼びかけに応じ、現地見学会には全国各地から100人以上が参加。アーティストだけでなく、中学生や幼稚園の園長先生、主婦やサラリーマン、まちづくりのNPO主宰者など、多様な人々が山間の学校に集まりました。予想をはるかに超える反響は、学校という存在が地域の拠り所であり、人々の心の灯であり、最後の砦であることを示しているのではないでしょうか。

「大地の運動会」の夢

日本全体で交通インフラをはじめとする社会基盤の弱体化が進み、社会の底辺で起きている問題は大きく、深刻です。そんななか、アートという「生きる喜び」を仕事にする私たちに何ができるのか——。その問いに向き合いながら、今年も昨年に続いて「大地の運動会」を開催できたことは、大きな喜びでした。

大地の運動会

「運動会」という、日本独自の伝統的な地域行事に、外国人や障害をもつ人、経済格差の中で生きる子どもたち、地域の住民が一緒になって集い、遊び、五感を開放して交流する。そうした時間と空間をつくり出せたことは、私たちのささやかな希望であり、大切な成果であったと思います。

2025年12月 北川フラム