個展「Kawamata Archive 2025」開催中。川俣正さんと北川フラムが対談しました

2025年12月1日

川俣正 個展「Kawamata Archive 2025」展示風景

アートフロントギャラリーでは、川俣正 個展「Kawamata Archive 2025」を開催しております(会期:2025年11月7日~2026年1月9日)。
本展は、2024年に開催された「Kawamata Archive 2024」に続くアーカイブ展であり、川俣さんが2025年に取り組んだ活動を振り返る展示となっています。国内外の展覧会やコミッションワーク、継続プロジェクトなど、本年における川俣さんの多岐にわたる実践を、本展覧会で一堂にご覧いただけます。

また、これまで制作された全てのマケットを網羅した、川俣の作家活動を総括する貴重なカタログ・レゾネ「Tadashi Kawamata Maquettes Models」を販売しています。カタログ・レゾネに関する川俣さんご自身による説明は、こちらの記事にて公開しています。

本展開催にあたり、2025年11月7日に実施されたトークイベントの様子をお届けします。

まず、川俣さんに本展覧会のみどころをご紹介いただきました。

川俣 まずは今年のプロジェクトの中で大きかった、大阪・此花区の「千鳥橋ライトポスト」から紹介したいと思います。此花地区の青蓮寺湖公園に、今年の3月に恒久設置した作品で、全部で8〜9本くらいのライトポストを立てています。去年の夏に話が来て、行政とのやり取りや電源の問題などで最初は苦労しましたが、そこからほぼ6ヶ月で完成という僕の仕事の中でもかなり早いペースでした。

ライトポストプロジェクトは今回が初めてではなく、ベルギーの病院の駐車場のプロジェクトが最初です。また、トロントでのプロジェクトでは、建築家やランドスケープの人たちと一緒に取り組み、街にある様々な種類のライトポストを集めて、一つの場所に再構成しました。

千鳥橋ライトポスト (2025) 正蓮寺川公園(大阪市此花区)

川俣 他にも今回の展覧会では、ヨーロッパを中心に、ここ何年かで進めてきた作品を紹介しています。

フランス・ナントの公園で作った、鳥の巣のように川に向かって飛び出す展望構造物、デンマークでのツリーハウスプロジェクト、フランス・アンクレットの海へ向かって伸びていく木造作品、ドイツ・エッセンの埋立地でのプロジェクト、フランス・リヨンの川辺の小屋、オーストラリア・シドニーの建築家と取り組んだ恒久作品、スイスの橋や遊歩道などです。

六甲の浮き橋とテラス 模型 (2024) 合板、樹脂, H110mm×W900mm×D600mm

川俣 若い頃は「作って壊す」が当たり前でした。展示が終わったら撤去という流れですね。でもだんだん、テンポラリーのはずが期間が延びたり、残したいと言われたりして、気づいたら「パーマネント」になっていることが増えています。ただパーマネントといっても、僕の作品は木造なので、メンテナンスの仕事も最近とても多いです。

一方で、行政の規則、安全基準、道路や都市計画の法律などが年々厳しくなってきています。さらに場所の特性もあります。エッセンの埋立地では掘るとガスが出てきました。そんなことも含めて、いろんな場所と、いろんな条件によって、作品やその設置の状態などは変わってきたりするものですね。

続いて、川俣さんと北川フラムによる対談の一部をお届けします。

川俣 北川さんの功績は、アートの裾野を広げること以上に、地域でそういったプロジェクトを立ち上げていき、そこに町の人や行政を巻き込んでいくところにあると思うんですよね。

北川 僕のアプローチが他の人と違うのは、作品を作るまでと作った後というのを含めて、そっちの方に美術の面白さがあるということです。作品ができるまでのプロセスや、その周囲で生まれる人の関わりがあるから、地域にとってもいいという話になる。地域とアーティストが関わっていくプロセスそのものが重要なんです。作品を作ることも大事ですが、むしろプロセスの方が多くの可能性を持っています。地元の人が関わることで、作品も、コミュニティも育っていきます。

川俣 僕のスイスのプロジェクトで、木造なので作品がだんだんと壊れていく。そこで住たちが挙手して、作品を残すことに賛成する人たちが新しい板を買ってきて修理するんです。つぎはぎだけど、そうやって作品は残っていくんだなと思いました。

北川 今のアートの状況としては、色や形に、時間、スピードの係数をかけた作品が流行していると思っています。それを新しいものとし、情報だけで動いてしまっている世の中に対して、どう戦うかっていうのが一番重要だと僕は思っている。

川俣 フランス・ルアンでのプロジェクトで、僕の20年分のデータをAIに入れたらプランが出てきた。もちろん、実際に僕が手作業で作る段階でずいぶんと変わるけれど、きっかけとしてはAIはこんなにもできちゃうのかと思いました。でも、やはりどこかで根底的には、手技、発想というところは、AIにはできないことを僕らはやろうとするし、見つけていくかということがある。

北川 AIは最後のジャッジの際に平均化するから、だんだんと落ちていくんですよ。これに慣れていっていることが、特に日本の場合は厳しいと僕は思ってますけどね。

北川 本当にいろいろなことを行っている中で、何か世間と同じようなことを言わないと、もう発表できないんじゃないかくらいの危機感を抱いています。外圧的なものというより、民主的に多数だからという理由で。

川俣 それってアートの真反対ですよね。

北川 そうなんです。ただ、そういう人たちが多数で、それが悪いとも言えない中で、今、美術はどうするかという話です。今こそ本当に頑張らないとまずいと思いますね。

川俣 僕の仕事は、1/3が個人コレクターからのオ-ダー、1/3ががギャラリー、1/3が美術館などの公共事業です。個人コレクターとの仕事はまだ自由に行えるので少しは救いですが、公共的な場所でやるプロジェクトは、そもそもアートに懐疑的で、例外を作ってはいけないという雰囲気で、どんどん縛りが厳しくなってきています。

北川 パーマネントなパブリックなアートに関しては、もうそんなに変わったことはできないですね。昔は権力が悪いとか言ったんだけど、今では世論の方が極めて保守的と言えます。

川俣 自分は迎合したくない。僕にとって美術とは、みんなと違う、みんなが言ってることとは違う、後ろ向いて歩いたりすることができる、唯一の媒体だと感じています。斜に構えるみたいなね。

僕がパリにいる意味は、外国で外国人でいられる立場でいられることかと。越境者みたいな立場でいることが、物を見るときにクリアに見えるように思います。日本にいて日本で何かをやるのとは、全然違う視点を持てます。

1時間に及ぶ議論の全編は、Youtubeからご覧いただくことができます。

展覧会情報「Kawamata Archive 2025」

【会期】2025年11月7日(金)~2026年1月9日(金)
【営業時間】火~土、11:00~17:00
【休廊日】日曜、月曜、祝日、2025年12月26日(金)~2026年1月3日(土)
詳しくは、こちらをご覧ください。