サンワカンパニーアートアワード2020の受賞作は審査員の意表を突くものだった。それは作品のメインの素材がボルダリングのホールドを用いた作品だったからだ。通常このホールドを見慣れた人でも、これがアートの重要な素材に転用できると思いつくだろうか。展示された作品を見るとそれは枯山水の石のポジションを平面上に展開、ある種空間の構造と化している。しかし禅寺の枯山水には似合わずカラフルでポップである。そこに奇妙で予想外の対比が起こっている。日本の古典文化がポップな装いで登場し、それがスポーツの世界へ、そしてオリンピックへと連想を繋ぐ。ボルダリングの壁面上の身体の動きがアートへと転嫁する。オリンピック前年の2019年にこれほどタイムリーで日本らしい現代美術はあっただろうか。ということで、審査員の意見の一致を見てアワードの大賞となった。
しかし角のこれまでの作品を見ると、そこには一貫して奇妙で独特の表現言語が見え隠れすることがわかる。それはある種の「ポエティックな思考」のあり方ということもできるのではないか。これまでの作品のモチーフで一番多く登場するのは、家の形である。それは都市というのでもなく、建築でもなく、まさに人の住む「家」を意図しているように見える。それがあたかも部品のように手玉に取られ、意表を突く形で状況の中に取り込まれている。時には、小さな基盤の上に、あるいは揺れ動く船の上にノマドのように、環境の部品のように設置される。木や、動物、船といった他の素材も、インスタレーションの部品として再構築される。熊の上に生え出る草の芽は、何かのアイロニーなのか? 無関係だったはずの事物が併置され、そこに新たなシンタックス=物語が生まれてくる。複数の事例を見ないと、そのことの事実がわからない。しかしこの彼の言語がわかり始めると、事物の意味が変わって見える。それは驚きをともなうある種の覚醒だ。これまでの手法を援用し、新作を発表する今回の個展は、さらに新たな覚醒をもたらしてくれるのではなかろうか。